みなさんこんにちは! アニメや映画などのレビューを行っている旅狼のレビュー小屋です!
今回お届けするのは、『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』挿入歌『ENDROLL』の歌詞考察です。
5年前、僕が『閃光のハサウェイ』を映画館で観た理由の一つは、[Alexandros]の主題歌『閃光』でした。CMの映像美に惹かれ、YouTubeの冒頭15分でハマり、最後は曲で完全に持っていかれた。かなりミーハーな入り方だったのですが、結果としてしっかり沼りました。笑
そんな川上洋平さんの歌声が、今回は本編中に聞こえてきます。しかも、SennaRinさんとのデュエット曲としてです。正直、今回も[Alexandros]がオープニングかエンディングを歌うだろうとばかり思っていたので、意外でした。
そんなわけで、挿入歌ごとに2つの記事に分けて考察をしていきたいと思います!
※この記事は、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』を観た方に向けて書いています。 本編の内容に最初から触れますので、ネタバレされたくないという方はぜひ本編を見てから戻ってきてください!
『キルケーの魔女』の音楽

まずは大前提として、今作の音楽の並びを載せておきます。
| 曲名 | アーティスト | |
|---|---|---|
| オープニング | Snooze | SZA |
| エンディング主題歌 | SWEET CHILD O’ MINE | GUNS N’ ROSES |
| 挿入歌 | ENDROLL | 川上洋平[Alexandros]×SennaRin |
| 挿入歌 | CIRCE | SennaRin |
『ENDROLL』は、作詞がSENNARINさん、作曲・編曲が澤野弘之さんです。
第1部は、オープニングが澤野弘之さんの『Möbius』、エンディング主題歌が[Alexandros]の『閃光』。どちらも書き下ろしでした。今作では既存の洋楽が2曲を占めていて、書き下ろされた2曲はどちらも挿入歌に回っています。
『ENDROLL』は誰の歌?
先にお伝えすると、今回の楽曲については公式が説明を出しています。今回取り上げている『ENDROLL』については、
マフティーのリーダーとして宿命を背負うハサウェイが、ギギとの出会いをきっかけにケリア・デースとの関係に綻びを生じさせていく。そのなかで見せる「一人の青年」としての一面や脆さを表現した曲だ。
とされています。
澤野弘之さんも「ハサウェイとケリアの昔の関係性を描く回想シーン」のために作った曲と説明していますし、SennaRinさんも「2人の掛け合いのイメージがあり、自身は特にケリア寄りの気持ちで歌った」「楽しいシーンはもうエンドロールでしか流れない」とおっしゃっています。
ネット上の考察を読んでいると「ハサウェイとギギの歌でもある」と捉えている方もいるのですが、公式の説明に沿うなら、この曲の中心にいるのはケリアですし、流れたシーンを考えても、「ハサウェイとケリアの曲」と言ってまず間違いないでしょう。
ケリア・デースという人物

ケリアは一言で言うと、「ハサウェイの恋人であり、ハサウェイがマフティーへ参加するきっかけを作った人物」です。
こちらの小説と映画の違いでも少し書いたように、小説版ではハサウェイとの出会いからここまでの関係、ギギとの一件によるハサウェイとの関係の変化がわりあい淡々と語られただけなのに対し、映画ではこの『ENDROLL』を流してまで、とても印象的なエピソードとして描いています。
正直、ケリア側の視点がほとんどなく、描かれたとしてもケリアの人間性なのだろうか、言葉ではなく態度や行動にそれとなく出る程度なので、ケリアの心の内はかなりわかりにくいです。この『ENDROLL』が流れた回想シーン(これも映像だけでセリフはない)で、「こういう過去があっての今なのか」と視聴者側が感じられる構成になっています。
タイトルの『ENDROLL』から考える

ここからが本題です。
まず、タイトルの『ENDROLL(エンドロール)』そのものについて。
「エンドロール」って、「THE END」とは違いますよね。物語そのものはもう終わっている。けれど、観客はまだ席を立たないあのイメージです。スタッフの名前が流れていく数分のあいだ、頭の中では物語を振り返り、余韻に浸っているのではないでしょうか。
「エンドロール」とは、出来事は終わったけれど、感情の処理だけがまだ終わっていない時間のことです。
そう考えると、この曲は、終わったあとに振り返っている歌ではありません。かといって、終わる前の歌でもない。
終わった後の歌ではなく、終わるしかないと分かっている瞬間の歌。
まだ叫びたい。まだ見ていたい。まだ何か言える気がする。でも、現実のほうが先に終わっている。感情より先に、物語の幕が下りている。ハサウェイがケリアに対して抱えているのは、たぶんこれなのだと思います。
振り返ってみたら、まだ終わらせたくない気持ちが溢れてきた。でも、自分が選んだ道のせいで、もう終わることが決まっている。これに気づいた瞬間の歌。、、、いやはや、切ない。
テーマは「喪失」ではなく「不可逆性」
ほら また 落ちてく
雨 消えていく 音
もうどんなに叫んでも 届かないから
歌詞を読んでいて感じるのは、これが「悲しい」を歌った曲ではないということです。
雨は普通、感情の比喩になりやすい。悲しみ、喪失、浄化、孤独…。そんな雨が落ちて、音さえも消えて、声が届かなくなっていく。派手に感情を爆発させる場面がほとんどありません。
叫ぶ気力ごと、世界に吸い込まれていくような感覚がずっと続きます。
「届かない」という言葉が出てきますが、これは相手が聞いてくれないという意味ではない気がしています。もう、届く場所に相手がいない。そんな感覚に思えます。
We’d already gone
ここには、「もう終わってしまった」というニュアンスを強く感じます。
風
冴えていく
左脳
歌らしいリズムに合わせて「左脳」という言葉。これ、本当に面白いですよね…! 澤野さんの音楽っぽい単語の並べ方だと思います。
急に出てきて「左脳?!」と思う方も多いと思いますが、「左脳」という言葉からは、一般に言語や論理的な処理を連想します。もちろん、実際の脳機能は「左脳=論理、右脳=感情」と単純に二分できるものではありません。ただ、この歌詞の言葉選びとして考えるなら、感情に溺れる一方で、頭のどこかでは「もう戻れない」と理解している。その冷静さを「左脳」という単語に感じます。
そしてトドメのセリフ、
Someone’s gotta go
“I gotta go”なら聞いたことがある方もいるはず。「もう行かないと」という意味です。
なのでこの歌の場合は、「誰かが行かないと」→「どちらかが去るしかない」と解釈できるわけですね。
心を枯らしたって
過去に変わる二人

この曲のテーマは、喪失ではなく不可逆性なのだと思います。
戻れない。届かない。癒えない。でも、過去にはなっていく。
厄介なのは、過去になることが救いでもあり、同時に残酷でもあることです。
過去になってくれるから、人は生きていける。でも過去になった瞬間、その関係はもう現在ではなくなる。悲しみを爆発させているのではなく、悲しみが歴史に変わっていく瞬間を歌っている。美しさと儚さと、どこか冷たささえ感じられる。それがこの曲ならではなのかな、って。
そしてこれ、かなりガンダムらしくもありますよね。
個人の感情はある。でも、時代や立場や選択がそれを許さない。誰かが去らなければならない。誰かがやらなければいけない。どうしようもない不条理さえ感じてしまう何か…。
ハサウェイが背負っているものを考えると、この曲は恋愛の歌でありながら、そのまま彼の選択の歌にもなっているようにも感じます。
でも、「エンドロール」なら……
ここからは結構な深読みです。
『キルケーの魔女』は、小説から大きな改変がいくつかありまして、中でもこのケリアとの別れは、かなり印象的です。というのも、元々の小説では、冒頭のヴァリアントのシーンで「ハサウェイとケリアの出会い」「二人のここまでの関係のすれ違い」が語られます。そして、ケリアがジュリアと共にヴァリアントを離れて陸側で動くことになったのは小説でも映画でも共通ですが、少なくとも小説では、映画のように「マフティーを離れる」という形では描かれていないのです(そのままフェードアウト的なかんじ)。
「あえてここまで大々的に描いたのなら」と深読みしつつ、「エンドロール」というタイトルを考えると、、、
「映画第3部で、ケリアが何か大事な役割をこなすのではないか!」
と、ちょっぴり期待している自分がいます。
たまにあるじゃないですか。エンドロールの後に、Cパート的に後日談だったりその後の様子、あるいは続編を匂わせる意味深な”後書き”ならぬ”後描き”が……。
なので、「一見関係を断ったように見せて、実は裏で何か動いていた」みたいなムーブを想像してしまうのです。
「もう同じようには戻れない」という意味の「不可逆性」も、「戻れない」わけではないです。あくまで「”同じ形で”戻れないだけ」ですから。
そうなってくると、ハサウェイの結末そのものも変わるのか、はたまた「そこ」へ行き着く流れだけが変わるのか……。第3部が本当に楽しみですね!!
『閃光』から『ENDROLL』へ
ここからはさらに深読みです。そう読むこともできる、くらいで受け取ってもらえたらと思います。
歌っている川上さんは、この曲についてこうコメントしています。
第1部の『閃光』では「衝動」を、今作ではその先に残る「脆さ」を表現した
衝動から、脆さへ。
同じ声が、二作にわたって同じ人物を歌っている。ここまではわかりやすい話です。僕が気になったのは、その声が置かれた場所が変わっていることでした。
第1部では主題歌。エンディングで、観客全員が必ず聴く曲です。今作では挿入歌。本編を観ないと存在すら知らない曲になっています。
「衝動は表に出せる。でも、脆さは表に出せない。
これってなんとなく、ハサウェイの人間性なんじゃないか、とも思うのです。「マフティー・ナビーユ・エリンとして、時に激しさを見せ、強い自分を皆に見せる。けれど、組織の中で脆さを見せることはない」と。
ちなみに……

この曲が収録されているコンセプトEPは『LOSTandFOUND』というタイトルです。お堅く書くと「遺失物取扱所」という意味ですね。
「失くしたものが、持ち主に返らないまま置かれている場所」
、、、まったくよお、ガンダムらしいじゃあねーか……。笑
また、収録曲は、CIRCE / LAST / DELUSION / ENDROLL / LOSTandFOUND / BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて) / ENDROLL -HaThA- の7曲。
『BEYOND THE TIME』が入っているのが、個人的にはかなり刺さりました。『逆襲のシャア』の主題歌です。僕は第1部を観る前に『逆襲のシャア』を”履修”しましたので、ここにこの曲が置かれているのも、なんとなく意味深に感じます。笑

『ENDROLL』歌詞考察 まとめ
ということで今回は、『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』の挿入歌『ENDROLL』について考察してきました。
5年前に『閃光』で引き込まれた身としては、同じ声がこういう形で戻ってきたことが素直に嬉しかったです。しかも今回は、本編を観た人しか知らない場所に置かれている。
そして、ハサウェイとケリアの関係を終わらせた原因のほうにも、もう一曲あります。ギギの曲、『CIRCE』です。そちらは別の記事で書いたので、ぜひ合わせてお楽しみいただけたら嬉しいです!






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