みなさんこんにちは! 小説などのレビューを行っている旅狼のレビュー小屋です!
今回ご紹介するのは、刊行から70年以上たった今でも世界中で読み続けられている不朽の名作、サン=テグジュペリの『星の王子さま』です! たとえ読んだことがなくても、題名を聞いたことくらいはあるという方なら大勢いるのではないでしょうか!
明快でわかりやすいストーリーの中に散りばめられた、この現代社会への数々の”問いかけ”や”メッセージ”。いつ読んでも何度読んでも、きっと”何か”を得ることができる、そんな『星の王子さま』の感想や考察を、あらすじや名言とともにお届けします。
読もうかどうか迷っている方、読んだあとに内容を整理したい方はぜひ参考にしてみてくださいね!
『星の王子さま』のあらすじ

『星の王子さま』は、「僕」という主人公の一人称で書かれています。
物語は、「僕」が子供のときに「自分の絵を見せたときの大人たちの反応や社交的に大人たちに合わせなければいけない環境からまわりに馴染めないでいた」という思いを綴るところから始まります。
そして、飛行士として成長した「僕」が6年前の回想として「砂漠に飛行機を不時着させた際に出会った、とある”王子さま”との物語」を描いています。
題名の「星の王子さまに当たる「僕」が出会った「王子さま」は、無垢で無邪気な子供として描かれており、何かと現実的な「僕」に対して、「王子さま」は次々と自らの旅の経験を話していきます。
それらの話を通じて、「僕」は「人間として大切なものは何なのか」を考えていくという物語の流れとなっています。
『星の王子さま』 率直な感想と評価
まずは、『星の王子さま』を読み終えての率直な感想と評価を簡単にご紹介します!

どんな内容?
物語は「僕」の一人称ですが、その大部分は「僕」が「王子さま」から聞いた、星々を旅したときのお話です。
「バオバブが育つと星が割れてしまう」だったり「王様が1人座れるくらいの大きさしかない星」だったりと、登場する星の大きさがとても小さく表現されているのが非常に印象的でした。
そこで様々な人が暮らしているのも驚きですし、なぜか違和感なく読めてしまうのが、サン=テグジュペリの発想力と表現力の凄さではないかと思います。
無垢な王子さまの言葉だからこそ心に響く

そんな星々を旅しながら多くの「疑問」を感じていく王子さま。その疑問一つ一つが、現代にまで通じる問いかけだったり皮肉だったりします。
そして、この問いかけや皮肉がとても理解しやすく描かれているのもまた、サン=テグジュペリの表現力の豊かさだと感じました。
そして何より、無垢な王子さまの言葉だからこそ、本当に的確に刺さるのですよね…!
「僕」は現代の大人の写鏡
物語の書き手である「僕」も、冒頭から幼少期を振り返って
大人になると、みんな「数字」ばかり
ということを言っていますし、冒頭の絵のお話にしても、子供の自由な発想を大人の決めつけによって制限してしまっている、と感じられます。
ただ、子供のときはそれくらい鋭かった「僕」でも
子供の思わぬ言葉に、意外な気づきがある
ということを考えず、「子供だから」とはじめは王子さまを無下に扱う「僕」は、現代の大人たちの”鏡”になっていると感じました。
誰だってはじめは、”大人に対する疑問”を感じる無垢な子供だけれど、成長とともに”ならされて”いってしまう
というふうにも捉えられるかもしれません。
『星の王子さま』は誰向け?
ともあれ、『星の王子さま』はどこを切り取っても何かしら感じられ考えさせられる内容になっており、それでいて、非常にわかりやすく明快なストーリーや表現になっています。
児童文学という位置づけではありますが、大人が読んでも十分楽しめます。むしろ大人が読むからこそ、色々なことを思うような素晴らしい作品だとオススメできますよ!
『星の王子さま』 は何が言いたい? 感想・考察・名言

それではここから本格的に、『星の王子さま』を読んで僕が思った感想や考えた考察を、名言とともにご紹介していきます!
どんな内容が書いてあるのか、何が言いたい作品なのか、自分が読んだ感想と照らし合わせたいなど、あくまで意見の一つとして楽しんでいただけると嬉しいです!
バオバブの木
「王子さま」の星には、たまにバオバブの木の芽が生えてしまいます。
王子さまの星はとても小さく、根が大きなバオバブの木がそのまま育ってしまうと星が割れてしまうのです。なので毎日、王子さまはバオバブの芽が生えていたら取り除く作業を怠ってはいけませんでした。
ここからは、
やるべき小さな仕事をコツコツやらないと後で大変なことになる
という教訓を感じられました。
人は「重要かつ急ぎ」のことから何事も手をつけると思います。ですが本来は「重要だけど急ぎではいことから手をつけるべきだ」とナポレオン・ヒルも書いています。
「重要だけど急ぎではいこと」から手をつけていけば、自ずと急いでやらなければいけないことはなくなるということですね!
花

王子さまの星には、一輪の花が咲いています。この花は喋るのですが、風を避けろだの虫を取れだの、何かと注文してきます。
そうしているうちに王子さまは、花に愛想をつかしてしまいます。
しかしお世話をしなくなってしばらくして、花がその美しい見た目や香りで王子さまを癒してくれたことを思い出し、花に感謝といたわりの想いを再び持ち、王子さまから歩み寄るのです。
ここからは「動植物への愛情を持つこと」も感じますが、それ以上に
表面上の言葉ばかり聞くのではなく、行動やその言葉の意味をもっと見よう
というメッセージをより強く感じました。
口ではあれこれ注文してきた花ですが、花は存在するだけで王子さまに癒しを与え、話し相手にもなり、王子さまにとってかけがえのないものでした。(花も最後には、王子さまにちょっとだけ”デレ”ます。笑)
世の中には、黙々と行動で示す人がいる。ツンデレや口下手だっている!笑
どんな人に対しても、表面だけじゃなくて中身ももっとよく見て向き合おう
ということですね!
小さな星の王様
とある小さな星に、1人でいる王様がいました。
彼は、自分自身で何を支配しているのかわかっていないのに人を支配しようとする、とにかく命令しようとする人でした。
何も把握していない、あるいは何も見えていないにも関わらず、人の上に立って命令を下す愚かな人、という皮肉ですね。
そして、そんな人間が世の中にはたくさんいるということを伝えたいのではないでしょうか。
大物気取りと酒浸りの男
とある星にいる「大物気取り」と「酒浸り」。この2人はよくいる”ダメな大人”の例ですね。笑
大物気取りは、実は自信がない器の小さな大人
酒浸りの男は、自分に起きていることを直視せずに現実から逃げ続ける大人
こうはなりたくないと誰もが思うけど、知らず知らずのうちになっているかもしれないという教訓。さらには、なっていても自分で気づいていない可能性もあるという示唆ですね!
「人の振り見て我が振り直せ」とはよく言ったものです。
実業家
実業家は「星」を持っています。ここでの「星」は「お金」を意味していると考えられます。
そんな実業家は、ただ「星」を”管理しているだけ”で、星は何の役にも立っていないし、実業家も星を利用して何かをなそうとなんてしていません。
お金を持つことは別に悪いことではない。ただ、それをどのように使うかが大切なのではないでしょうか。
そんなようなことを、ここでは感じました。
ガス灯の点灯人

電気が普及している現代には馴染みがありませんが、かつては町の電灯に明かりをつける「点灯員」という仕事の人がいました。
とある星にもそんな点灯員がいるのですが、その星は小さすぎて、すぐに日が登っては沈み、また登っては沈みます。その度ごとに点灯員は電灯を消してはつけて、消してはつけてを繰り返しており、もうクタクタなんです。
王子さまは、はじめは「人の役に立っている素晴らしい人だ」と感じます。ですが、次第に違和感を覚えはじめます。
その点灯員は、ただ指示を聞くだけで自身では何も考えず、他の人から言われたことに従うだけの人でした。それでいて「休みたい、寝たい」と口にします。まぁ、今風に言えば”社畜”でしょうか。。笑
そして、王子さまが「もっと良い方法があるよ」と提案すると、何かと言い訳を言って聞く耳さえ持ってくれないのです。
結局、「もっと考えて行動してやりがいを感じればいいのに」と王子さまは考えながらその星をあとにします。
せっかく人のためになっているのだから、ただ命令に従うだけじゃなくてもっと自分で考えて生きていこうよ!
そんなメッセージに感じました。
また、
どんな人の意見にも耳を傾けてみるという姿勢の大切さ
も、ここでは感じましたね!
地理学者
ある星にいる学者は、頭でっかちな社長や研修者を表現しているように思いました。
自分では行動を起こさず、人の話を聞いて資料の上で采配するだけ。実状が見えておらず、机上の空論ばかりを言う人だったのです。
情報を集めて熟考することはとても大切なことです。しかし、行動がまったく伴わない思考は、ただ頭の中でシュミレートしているだけです。
計画や考えは実際に自分の体を動かして行動することで、意味を持つのではないでしょうか。
きつねとの出会い

「王子さま」は長い旅の果ての最後に、地球にたどり着きます。そして長く歩いているうちに、「きつね」と出会います。
きつねからは、「なつく」ということを教わります。そして「なつく」とは「絆を結ぶこと」であり、絆を結べば「その人にとって唯一の存在になる」ときつねは言います。
絆を結べば、きつねから見た王子さまは、たくさんの人間の中の特別な1人になる。そうすれば、
金色に輝く麦畑を見ただけで王子さまの黄金の髪を思い出して、想い出に浸ることができる
と言うのです。
王子さまは「花」とすでに絆を結んでいますから、地球にあるたくさんのバラを見ると、自分の星のバラを思い出すことができる。
唯一の存在になれば、ちょっとしたことでその人や動物やモノを思い出すことができる。そして、その数が多いほど、日々が輝いてみえる
ということに、王子さまは気づくのでした。
また、
人間はどんな人とも動物ともモノとも絆を結ぶことができる。これが人間の良いところであり、大切なものだ
かけがえのないものは「共有した時間そのもの」なんだ。人間はそのことを忘れてしまっている
とも言っています。
井戸の水
「僕」は砂漠に不時着してから水を探しまわっていたのですが、あいにくそこは砂漠のど真ん中。水を見つけることができず、そんな中で出会った「王子さま」と水を探すこととなります。
そして、王子さまと砂漠と夜空の美しい光景を目の当たりにし、苦労の果てに井戸を見つけたのでした。
確かに砂漠を歩き回るのは辛かった。でも、その時間があったからこそ王子さまとの美しい想い出が生まれ、自分の苦労や努力の先に見つけた水だからこそ一層おいしい。そして、そんな井戸の水は永遠に忘れることのないものになると言います。
上のきつねの話と同じですね!
人間は、人や動物、モノやコトについて、それに関わった事柄をすべて含めて想い出にします。そして、それを連想するものを見ると思い出し、その度ごとに想い出に浸ることができる、ということなのです。
どんなことも思い出にすることができるのが、人間の素晴らしいところです。そんな生き方を大切にしながら、日々を過ごしていきたいですね!
『星の王子さま』 まとめ

ということで今回は、サン=テグジュペリの名作『星の王子さま』のブックレビューをお届けしてきました!
サン=テグジュペリの時代と比べると人々のありようは変化したはずなのに、それでも現代の人々に通じることばかりというのが、この『星の王子さま』一番のポイントです。
人間には不変的な”本質”がある。そんなことを思わせ、多くの大切なことに気づかせてくれる一冊になっています。
本を読んだ感想は人それぞれです。『星の王子さま』をまだ読んでおらず、今回の記事で少しでも気になったという方がいらっしゃればとても嬉しいですし、ぜひ読んでみてほしいです! そして、読んだ思いを心の糧にし、これからの人生にぜひ役立てくださいね!
『星の王子さま』の作品概要
【題名】
星の王子さま(Le Petit Prince, The Little Prince)
【作者】
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(Antoine de Saint-Exupéry)
【作品ジャンル】
児童文学
【今回の出版社】
新潮文庫
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